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近藤史恵『キアズマ』〜ブックレビュー〜 [小説・本の紹介]

 これ、映画化決定!と読み終わった瞬間に自分の中で勝手に決めてしまいました。近藤史恵さんの自転車ロードレースシリーズ4作目『キアズマ』を読んだ感想です。映画でやったら絶対に観に行きます。


キアズマ (新潮文庫)

キアズマ (新潮文庫)

  • 作者: 近藤 史恵
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2016/02/27
  • メディア: 文庫



 長編としては『サクリファイス』『エデン』に続く3作目ですが、過去2作がプロの物語を描いていたのに対し、こちらは大学の自転車部のお話です。主人公が大学から自転車を始める設定ということもあり、自転車ロードレースを全く知らない初心者の方でも入り込み易い作品だと思います。


 主人公の岸田正樹は大学に入学してすぐに、自転車部の先輩とトラブルになり、不慮の事故から部長の村上に全治10ヶ月のケガを負わせていまいます。そのことで村上から自分の代わりに自転車部に入って欲しいと請われ、1年間を条件に入部することに。柔道の経験がある正樹は次第に実力をつけ、部のエース櫻井と肩を並べるまでになります。



 以下、ネタバレありです。


 物語は主人公の正樹とエース櫻井の関係性を軸に展開します。気性が荒く、ヤンキーのような性格のくせに、レース前になると繊細な一面を見せる櫻井。アシストとしてチームに入りながら、レースを重ね、自分の実力を自覚する中で、櫻井に追いつき、追い越したいと思うようになる正樹。そして影を落とす二人それぞれの過去。正樹は次第に、エースを背負い、勝ちにこだわる櫻井に惹かれ、彼のことを知りたいと思うようになります。


 主人公は過去に柔道の稽古中の"事故"で友人に障害が残るケガを負った際に、助けてやれなかったことを後悔しています。そして命の危険のある行為や、誰かを危険にする行為を極力避けるようにして生きていました。


 自転車競技にはアクシデントがつきもので、転倒や落車によって命に関わるケガをしたり、他人を巻き込んだりということが、割と頻繁にある競技です。主人公はレース中にそうした場面に遭遇していく中で、自分のやっていることが間違っているのではないかと自問するようになるのです。


 この物語のテーマは「自分と関わりのある誰かの無念や悔しさを託された者の生き方」だと思います。それは面と向かって託されたわけではなくても、相手との関係の中で自分が背負わなければいけないと感じていることなのだと思います。


 両親の期待、祖父の遺志、若くして亡くなった友人の夢・・・、それは人によって形は違うでしょうし、普段強く意識していなくても、誰にでもあるものだと思います。


 自転車競技の役割の一つである【アシスト】は、エースに思いを託す立場です。1作目の『サクリファイス』が、まさにこれをテーマに扱っていますが、文字通りアシストはエースを勝たせるために風除けになり、他チームの体力を削り、己を犠牲にして、ゴールまで到達する前に力尽きます。


 エースは自分のために犠牲になった仲間の思いを背負ってゴールを目指すのです。背負って生きることを重圧と感じながらも、それを力にして前に進めなければエースには成れません。主人公正樹の苦悩は、自らの過去と折り合いをつけることと本当のエースになることとの間でリンクします。


 結局、そう簡単に折り合いをつけることなんでできなくて、重圧は依然としてあるけれど、彼が見つけたのは"覚悟"のようなものなんじゃないかと思います。私も自分の人生に、覚悟を決めたいものです。


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