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小篇「名を捨て実を取る」アイドルのショート×3(没ネタ供養) [小噺・小ネタ]

「事務所をやめさせてください」


 私の決意は固かった。身体ひとつでこの事務所に入り、今まで耐えてきた。


「市川、本気なんだな。ただし、ウチから出て行く以上、このまま芸能界にいられると思うなよ」


 事務所の悪名は知っていた。両親にも反対された。それでも、あの両親の元にいるよりはいいと思った。


「今まで芸名として使ってきたお前の本名も、二度と名乗れなくなるぞ」


 この事務所がアイドルの本名を商標登録し、それを元にアイドルが辞めないように脅しているという噂も聞いていた。これまでの努力も、高いレッスン料も、もう戻ってこない。それでも、この地獄のような日々が終わるのなら、安いものだと思った。


「お前なんかな、名前だけでウチに置いてやってるようなものなんだ。その名前がなければなんの価値もないんだよ!」


「構いません。この名前は、そっくりそのままお渡しします。今までありがとうございました」


 深々と頭を下げ、事務所をあとにする私の背に、捨て台詞のような言葉が響いた。


「二度と芸能界の敷居をまたぐんじゃないぞ!市川 寿限無寿限無五劫の擦り切れ海砂利水魚の…」


 こうして私は、いまいましいキラキラネームを捨てたのであった。


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